トワイライト・ブレイク

ネオ・ハードボイルドの名作「初秋」で

いよいよ初夏と呼ぶにふさわしい季節になってきました。ちょっと歩くと汗ばむほどですが、窓からはさわやかな風が吹き込んできて、まだクーラーをつけるには早いですね。

そんなんで、今日は1984年のヒットナンバーが中心。


オープニングは、1984年5月のヒット曲をお届け。
「サザンウィンド/中森明菜」「涙のリクエスト/ザ・チェッカーズ」「君が、嘘を、ついた/オフコース」「気ままにREFLECTION/杏里」あたりですね。


続いてピックアップアルバム。
やはり1984年にリリースされた小山卓治の2nd.アルバム「ひまわり」を特集。
まさにBOOWYをはじめとするバンドブームが起こる頃にデビューしたシンガー・ソングライターで、デビュー曲の「フィルム・ガール」はほんと衝撃のナンバーでした。タイプで言えば尾崎豊が一番近いんだけど(実際、尾崎豊はよく小山卓治のライブを見に来ていたらしい)、尾崎よりも、もう少し大人な感じかな。ブルース・スプリングスティーンの流れを汲む、ストーリー性のある完成度の高い詩が特徴で、都会の底辺であがく人々(若者だけではない)の姿を鮮やかに描き出しています。
コマーシャリズムとはまったく無縁で、バブルへ向かおうとするあの頃にメジャーデビューできたこと自体、不思議でしたが、やはり本物は生き残るんですね。
ヒット曲もヒットアルバムもないにも関わらず、しっかりとファンは日本中にいて、今も精力的にライブ活動をしています。
そして今ももちろん「ロック」です。
「ひまわり」は、そんな彼のアルバムの中でも特に僕が好きな1枚。とりわけ「家族」という曲の歌詞が好きで

気の弱いやつから順番に駄目になっていく
だけど家族が助けあうのは当たり前のことだ
という一節が胸をうちます。
オフィシャルサイトには全曲の歌詞が公開されているので(なんとコード進行も!)、ぜひ一度読んでみてください。
家族
小山卓治 Official Web Site | RED & BLACK


ひまわり
ひまわり


朗読コーナー「ことばの散歩道」。
今日は星新一「エヌ氏の遊園地」から「秘薬と用法」を朗読してみました。


エヌ氏の遊園地 (講談社文庫 ほ 1-1)
エヌ氏の遊園地 (講談社文庫 ほ 1-1)


4時15分頃からは、「ヒットtheビート」
・・・ですが、今日は予定を変更して「Pick Up Night」から、僕のライブ「ジュリーナイト」の模様をお送りしました。


続いて「青春の1曲」
謡曲、フォーク少年だった僕も、高校生にもなるとすっかりロックに夢中になりました。で、たいていはパンク系のビートロックかメタルorハードロックのどちらかに分かれていきます。僕はもちろんビート系に走りました。いろんなロックを聴いてコピーをしたけど、どうしてもサウンドのニュアンスの再現できないロックがあって、でも凄く好きな感じで、何を聞けばその謎が解けるかずっとわからなかったんですね。当時はまだビートルズストーンズもほとんど知らなかったし。
そんな僕に答えを教えてくれたバンド、それがThe Street Slidersだったわけです。いわゆるブルース・ロック。これだ!とばかり聞きまくりました。
彼らは、そのサウンドだけでなく、歌詞も良かったんですよ。
そんな彼らの3rd.アルバム「JAG OUT」の中から、シビレルほどかっこいいナンバー「Pace Maker」をお送りしました。


木曜だけのコーナー「ミステリ館へようこそ」
文学離れの進む中、ミステリーはしっかりと人気も根付いていますが、このコーナーではみなさんの敬遠しがちな、海外の古典ミステリを紹介していきます。
今日紹介したのは「初秋/ロバート・B・パーカー
80年代なので全然古典ではないですが、この作品は今後もずっと名作として語り継がれる傑作なので、良しとしてください。
私立探偵スペンサーを主人公とするハードボイルドの人気シリーズの7作目。当時日本でも相次いで翻訳されたネオ・ハードボイルド作家たちの中でも特に人気でした。
「冗舌」「マチズモ(肉体誇示主義)」「料理好き」という一風変わった設定が話題になってましたが、根底にはしっかりと、ハメットやチャンドラーから受け継いだハードボイルド・スピリットが流れています。
特にこの作品では、どうしようもない両親に育てられてろくでもない人間になりそうだった少年に「ひとりで生きていける強さ」を教えるくだりがハイライトなっていて、熱く、さわやかな感動を与えてくれます。
というか、これを読んでグッとこない男は、男として生きていく資格はないと思う。少年達に、そして迷える大人達にすすめたい一冊。


初秋 (ハヤカワ・ミステリ文庫―スペンサー・シリーズ)
初秋 (ハヤカワ・ミステリ文庫―スペンサー・シリーズ)


続いてもうひとつ、木曜だけのコーナー「Touch The English!!」
要するに英語講座。小説の原文に触れながら英語に親しもうというコーナー。
テキストは「The Illustrated Man(刺青の男)/Ray Bradbury(レイ・ブラッドベリ)」
名文の誉れ高いブラッドベリの作品の中でも、特に僕の好きな一冊です。
まずはこの中から、衝撃的な名短編「Kaleidscope/万華鏡」を読んでみましょう。
今日のポイントは
「Hollis for the first time felt the impossibility of his position.」
これは訳しにくい文章です。このまま入試に出してもいいくらい。入試なら「自分の立場の不可能性」でも点はもらえますが、翻訳では失格。しっかり突っ込んで訳しましょう。ちなみに実際の訳は
「ホリスは初めて絶望的な状況を痛感した」
不可能→何も出来ない→絶望・・・こんな感じの連想でしょうか。でも「impossibility」に込められたニュアンスはよくわかりますよね。


The Illustrated Man (Grand Master Editions)
The Illustrated Man (Grand Master Editions)


今日はその他、「風の谷のナウシカ/安田成美」「ラ・ヴィアン・ローズ/吉川晃司」「キ・サ・ラ恋人/石川セリ」あたりをオンエアーしました。夏はもうすぐですね。


ではまた来週もお楽しみに♪